不動産投資における「デッドクロス」とは?
「本を読んでみたけど、なかなか理解できない」という人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、初心者でも直感的に理解できるような図を作ってみました。
たぶん、他のサイトや本には載っていないオリジナルの図です。(少なくとも私は、このような図を見たことがないので)
- 初期のキャッシュフロー(以下、CF)とデッドクロスは、実は表裏一体
- 本当の総資産 = 現金+物件の残存価値
- CFとは、あくまで総資産の一部が現金の形で現れたもの
- 結局のところ、デッドクロスとは現金と物件残存価値の帳尻合わせ
- 現金ベースで見ると、CFは納税の先送りによる将来の利益の先取り
という切り口で解説をします。今までわからなかったという人も、違う角度から見ることで理解が深まるのではないかと思います。
ぜひ参考にしてください。
不動産投資の「デッドクロス」について図解・解説します
アパート・マンションの収支を視覚的に表すと、下の図-1のようになります。図の黄色部分がキャッシュフローを表しています。
- 1.CFが潤沢:新築で家賃が高い、経費になる金利が多い
- 2.CFが減少:老朽化で家賃が下落、経費になる金利が減っている
- 3.CFがマイナス(=デッドクロスの状態):減価償却が終わってしまい、経費計上できない →税金が増える
- 4:CFが回復:借入金の返済が終わった状態
という流れになります。
※実際は固定資産税や修繕の費用は一定ではありませんが、仕組みを理解するための概略図なので、あえて単純化しています。
それでは、図の1から4までの状態について、順番に解説します。
1.購入時
- 新築・築浅のため家賃収入が多い
- 減価償却費を計上できる
- →キャッシュフローが多く出ている良好な状態
そもそもこの段階でキャッシュフローが出すぎていることが、後のデッドクロスの原因となります(詳細は後述)。
2.返済が進んだ時
- 建物の経年劣化により家賃が下がる → 賃料収入が減る
- 経費にできる金利が減る → 税務上の利益が増えるため、税金が増える
という理由で、キャッシュフローが減っていきます。しかし、まだ減価償却費を計上できるおかげで節税になり、収支はプラス。
3.減価償却が終わった時
建物と設備の減価償却費が終わってしまうと;
- 経費が激減 →税務上の「利益」が増
- →税金が増 →現金の収支がマイナスに陥る
- →これが、「デッドクロス」と呼ばれる状態
4.返済が終わった時
銀行への返済が終わると、その分の支出が無くなるため、現金の収支が良くなります。ローンの無い物件は「最強」とよく言われるのこのためです。
デッドクロスを回避するには
デッドクロスを根本的に解決する方法というのは、実はありません。理由は簡単で、デッドクロスの正体は、単なる”納税の先送り”だからです。例えば;
- 特に木造の物件は、減価償却年数が短い
- →毎年の減価償却費を多くとれる
- →実際の資産増加分以上に、キャッシュフローが出る
これは減価償却費を経費として、節税効果(実際は節税ではなく、納税先送り)があることを利用した、現金先取りの手法です。
しかし、実際の資産増加分以上にキャッシュフローを出して現金を増やした分は、その帳尻合わせがいつかやってきます。
そもそも、純資産の増加分以上に出るキャッシュフローというのは、何の富を生み出しているわけではありません。当然、それを利益として残すといった、錬金術のような方法はありません。
デッドクロスの対策として、一般的には下記の方法があるといわれています。しかし、どれも根本的な解決ではなく、影響のタイミングをずらす手段でしかないということを理解しておきましょう。
それぞれの方法について、解説します。
資金を積み立てておく(シミュレーションをしておく)
資金を積み立てておく、つまりキャッシュフローをプールしておくこと。これが王道です。
キャッシュフローを利益だと勘違いして使い込むのが、そもそも間違い。きちんとシミュレーションを行い、物件の残存価値も考慮に入れた「純資産」の状況を把握することが大切です。
そうはいっても、新築物件でデッドクロスが起きるのは、中古物件でも数年、新築であれば15~20年後であったりします。 そのころの経済状況は今より大きく変わっているかもしれません。
コツコツと積み立てた資金が、10~20年後も同等の価値を保っているのか。将来のデッドクロスを補えるのか。そんな遠い未来のことは、誰にも分らないというのが現実でしょう。
物件を売却する、または他の物件を追加購入することでデッドクロスを薄めるといった手段もあります。経済状況の変化という“時間軸のリスク”が無く、結果的には正解となる可能性もあります。
ちなみに個人的には、20年後の物価が現在よりも20%くらい上がっていることを、淡く期待しています。
本来なら20年かけて20%くらい下落するはずの家賃も、物価の上昇でカバーされる。そしてデッドクロスも起きず、高い金額で売却して利益確定。・・・そんな未来も無きにしも非ず。
返済年数と減価償却年数を合わせる
収支状況について考えやすくなるのが長所。ただし、減価償却の年数を伸ばすには、不動産鑑定士の意見書が必要となります。
他の物件で赤字(減価償却費)を出す
有効な手段であり、複数の物件を持つメリットと言えます。しかし、その物件でまた将来的にデッドクロスが来て困るというようなことを繰り返していると、いつまでも終わらないイタチごっこになりますが・・・。
繰り上げ返済をする・自己資金を入れる
物件を持つ人の財務状況や投資戦略によりますが、個人的には繰り上げ返済に否定的です。
目の前の収支は改善しますが、そもそもお金を借りている意味がなくなります。
不動産投資は、”お金を先に手にして再投資する”ことに価値があるのです。だから、融資を受けてキャッシュフローを出しているのです。
せっかく低金利で借りたお金をわざわざ繰り上げて返済するというのは、矛盾しています。金利が高くて負担になる等の理由がなければ、繰り上げ返済は不要と考えます。
自己資金を多く入れるのも同じです。借りる前から繰り上げ返済しているようなものです。
物件を売却する
初期に”無理やり出した”キャッシュフローの分は、売却時にキャピタルゲイン課税として跳ね返ってきます。最後に帳尻合わせをしているにすぎません。
言い換えれば、物件の売却は単なるデッドクロスの一括清算(先払い)です。”物件単体のデッドクロス対策”を理由に売却するのは、得策ではありません。
そのまま物件を持ち続ける
投資家にとって現金が大切ということもあり、キャッシュフローにばかり注目しがちです。
しかし、デッドクロスに陥ることでキャッシュフローが出なくなっても、家賃収入から元本の返済を進めてるかぎり、純資産は増え続けます。
なので、デッドクロスの状態でも物件を持ち続けるは、実は有効な投資なのです。現金にだけ注目しているから、表面上のマイナスが気になるのですが、融資の返済が完了すれば、収支も改善します。
参考書籍の紹介
デッドクロスの仕組みを理解するための良書として、下記の本を紹介いたします。Excelを使って実際にシミュレーションしてみることで、しっかりと理解できます。
参考動画の紹介
デッドクロスに関するYouTube動画を紹介いたします。不動産投資の第一人者である浦田健さんのチャンネルです。
コメント