今回は、トランクルームの稼働状況という希少なレポートになります。
トランクルーム投資の特徴として;
- 新規の店舗を購入(=開業・開店)の場合、稼働率はゼロからスタート
- →時間が経つほど店舗の存在が認知され、少しずつ利用者が増えていく
- →長期利用者が残っていくことで、稼働率が安定していく
- 稼働率の目安は、3年で80%・5年で90%くらい
といったものが挙げられます。そこで本記事では;
- 新規店舗から始めてから、どのくらいのペースで稼働率が上がるのか?
- 損益分岐点を超えるのはいつか?
- それまでにどのくらいの店舗賃料の持ち出しを想定するべきか?
といったことについて、私自身が購入した物件の状況を公開します。
ぜひ、参考にしてください。
トランクルームが開始1年半で損益分岐点に到達した
店舗概要
まず、店舗の概要について紹介します(以下、「コーシカ1号店」と表記させていただきます)。
あまり正確に書くと店舗を特定できてしまうので、少しぼかします。
タイプ: | 室内型 |
店舗規模: | 約 40部屋 (平均単価 約 9,000円) |
場所: | 札幌市内 |
購入時期: | 2019年 |
購入額: | 約1100万円 |
利回り: | 実質22%, 表面26% (詳細は後述) |
稼働率のグラフ
開業からの稼働率は、下記のグラフのようになっています。線は部屋数ベース、棒は賃料ベースの稼働率をそれぞれ表しています。
本記事タイトルの通り、開業後1年半で損益分岐点を超えました。管理費などの経費も算入した損益分岐です。
部屋数ベースでは稼働率は、48%に到達。おおよそ半分埋まったことになります。トランクルームにしては順調といえるのではないでしょうか。
賃料ベースの稼働率のほうが低い理由としては、
- 面積の小さい部屋から先に埋まった(=部屋当たりの単価が低い)
- 販売促進のため、契約から6か月間は賃料を安く設定。そのため、収入にラグがある
というものがあります。
別の言い方をすると、開始から1年たった時点で、その6か月後に損益分岐点を越える見通しが立ったという状態です。
また、同時期にオープンした他の2店舗を見ても、稼働率の推移は同じようなものでした。どちらも同じ札幌市内ですが、立地も規模も違う店舗。参考のために時々モニターしていましたが、稼働率の上がり方は同じくらいという”結果”でした。
ちなみにこの年は、いわゆる”コロナショック”の時期でした。2月~3月の引っ越しシーズンに、世間がパニックの真っ只中という、不動産オーナーにとっては痛い状況。この影響がなければ、もう少し稼働率は伸びたかもしれません。
収支について
トランクルームの利回りは、何と22%?
それでは、「コーシカ1号店」の利回りについて紹介します。
表1.初期投資費用
項目 | 費用 (千円) |
店舗設備 | 8,600 |
店舗契約など | 1,100 |
開業サポート | 900 |
消費税還付 | -800 |
損益分岐までの 賃料持ち出し | 1,000 |
合計 | 10,800 |
表2.満室時の収入・支出
項目 | 月間 (千円) | 年間 (千円) |
賃料収入 | 380 | 4,560 |
店舗の賃料 | -110 | -1,320 |
管理費 (賃料の15%) | -70 | -840 |
電気代 | -2 | -24 |
手残り | 200 | 2,400 |
上記の表1.表2.より、
満室時の実質利回り = 240万円 / 1080万円 = 22%
という計算に。かなりの高利回り物件になります。
稼働率が90%としても、利回りは20%。
ちなみに運営会社側のシミュレーションでは、利回りの分母に店舗契約費用など入っていないため、表面利回りは26.5%とのこと。
「家賃比率」について
トランクルームの収益性(店舗が賃貸の場合)を評価するのに大事な指標が、”家賃比率”。
一般的な不動産投資の”返済比率”に相当します。
家賃比率(%) = 店舗賃料 / 賃料収入
という計算式でいくと、「コーシカ1号店」は
満室時の家賃比率(%) = 11万円 / 38万円 = 29%
になります。
一般的な不動産投資に当てはめると、返済比率が30%くらいの状態。かなり安全といえます。満室になればの話ではありますが。
店舗によって「家賃比率」は違う
「コーシカ1号店」は店舗面積が約120m2で、賃料は11万円(税込)。m2単価は2,300円と、首都圏ではありえない安さです。
それでいて、トランクルームの賃料相場に大きな差はありません。札幌のような家賃の安い地方都市は、収益性が高くなります。
また、店舗面積120m2のうち、40%くらいは通路・電気設備などに必要となります。トランクルームとして稼働するのは、残りの60%くらい。これが「レンダブル費」とよばれる数字になります
アパート・マンションと比べたメリット
トランクルームは、アパート・マンションのように早く満室にはなりません。しかし、下記のようなメリットがあり、長期的に見れば有利です。
- 古くなっても賃料が下がらない
- 修繕費用がほとんどかからない
- 店舗賃料は100%経費計上できるため、節税効果が高い
- 固定資産税がかからない(賃貸の場合。間接的に払っていることにはなるが)
管理手数料は、アパート・マンションより高め
手数料は賃料の15%(運営会社によって異なる)。アパートの相場が5%であることを考えると高いですが、部屋の単価が小さいので仕方ありません。
ここで気を付けたいのは、オーナーが儲からないと、運営会社も儲からないという契約内容になっているかということです。
トランクルームや他の不動産投資に限らず、自分が得をすると相手にもメリットがあるかというのは、ビジネス全般において重要な判断材料になります。
トランクルームの稼働率90%は、満室アパートより強い
先述の通り、トランクルームは、時間が経つことで長期利用の客が残り、稼働率が安定していきます。しかし、なかなか満室にはなりません。
トランクルームはいつまで経っても稼働率90%・・・
たしかにアパート・マンションの満室(=100%)に比べると、見劣りしてしまいます。しかし、平均の稼働率が90%というのは、よく考えてみると”すごいこと”なのです。
アパート・マンションの場合、比較的簡単に満室100%になります。ところが、実質的なオーナーの負担はどうでしょうか。
例えば、入居者が2年サイクルで入れ替わるとします。その際、空室の期間が無かったとしても、新たな入居者の募集やリフォームのため、アパート・マンションでは入退去の費用で家賃3ヵ月分くらいは出ていくことになります。
そうすると、24か月分の収入に対し3か月分の支出で、実質的な稼働率は87.5%になってしまいます。
トランクルームで稼働率90%というのは、優良な満室アパート・マンションよりもさらに優秀といえます。
最後に
個人の感想になりますが、やはり損益分岐点を超えると一安心。心理的に大きな節目となります。
このあとは、新規契約が入るたびに「月収8千円アップ」とか「1万円アップ」と小躍りする。そんな楽しみがあります。「コーシカ1号店」の40部屋が全て埋まるところを想像すると、とてもワクワクします。
以上、トランクルームの収益性についての解説でした。投資の検討をされている人にとって参考になれば幸いです。
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